まさか、自分の部屋がゴミ屋敷になるなんて。半年前の私なら、きっと笑い飛ばしていたでしょう。私は、ごく普通のアパートに一人で暮らす、ごく普通の会社員でした。部屋は特別きれい好きというわけではありませんでしたが、友人を招くことに何の抵抗もない、平均的なレベルは保っていたはずです。その歯車が狂い始めたのは、些細なきっかけでした。仕事で大きなプロジェクトを任され、連日残業と休日出勤が続いたのです。平日は、帰宅すると食事をする気力もなく、コンビニで買ってきた弁当を食べて、そのままベッドに倒れ込むような毎日。空の容器やペットボトルは、とりあえず部屋の隅に置かれました。「週末に片付けよう」。最初は、そう思っていました。しかし、待ちに待った週末が来ても、私の体は鉛のように重く、一日中眠って過ごすだけで終わってしまいます。部屋の隅に積み重なっていくゴミの山は、私の心身の疲弊と完全にシンクロしていました。ゴミが床の半分を覆った頃、私はもう、何もかもがどうでもよくなっていました。ゴミを出すために分別し、ゴミ袋に入れ、決められた曜日の朝に集積所に持っていく。その一連の行為が、エベレストに登るのと同じくらい、途方もなく困難なことに思えたのです。部屋が汚れていることは、誰よりも自分が一番分かっていました。しかし、心が、体が、動かないのです。友からの誘いも「部屋が汚いから」と断り続け、次第に誰とも会わなくなりました。ゴミの山は、私を社会から隔絶する、薄暗くて安心できる要塞のようにも感じられました。アパートのドア一枚を隔てた向こう側には、普通の日常が流れている。そのことが、かえって私を部屋に閉じこもらせました。私の部屋がゴミ屋敷になったのは、私がだらしなかったからではありません。心が、助けを求める悲鳴を上げていたのです。その声に、私自身が気づいてあげられなかった。ただ、それだけのことだったのかもしれません。