ゴミ屋敷の清掃現場は、単に物の量が多いというだけでなく、技術的に処理が困難な廃棄物が多数含まれているという課題を抱えています。長年放置された部屋では、食品の腐敗や排泄物の放置により、生物学的な汚染が発生していることが少なくありません。このような現場でのゴミ処理には、単なる片付けの技術を超えた、高度な衛生管理と防護措置が求められます。作業員は感染症のリスクを回避するために防護服や高性能のマスク、手袋を着用し、ウイルスや細菌の飛散を防ぐための初動消毒を行います。また、液体が入ったままの大量のペットボトルや缶、中身の残ったスプレー缶などは、そのままでは廃棄物として受け入れられないため、一つずつ中身を抜き、容器を洗浄・分別するという膨大な手作業が発生します。これはゴミ処理の中でも最も時間と労力を要する工程の一つです。さらに、ゴミの重みによって床材が腐食し、そこに害虫が繁殖している場合、ゴミを搬出する過程でそれらが外部に逃げ出さないよう、段階的な燻蒸や殺虫作業が必要となります。ゴミ屋敷における消臭技術も、処理の成否を分ける重要な要素です。蓄積されたゴミが放つ臭いは、壁紙や床の深部、さらにはコンクリートの基礎にまで染み込んでいることがあり、ゴミを撤去しただけでは解消されません。オゾン脱臭機や特殊な中和消臭剤を用い、分子レベルで臭いの原因物質を分解する作業が必要となります。また、処理の過程で排出される廃棄物の行方についても、厳しい管理が求められます。家電製品に含まれるフロンガスや、古い家具に使用されている塗料、さらにはアスベストを含む可能性のある建材など、環境負荷の高い物質を適切に抽出・分別し、法に定められたリサイクルルートに乗せることは、現代のゴミ処理業者に課せられた重い責任です。ゴミ屋敷のゴミ処理とは、物理的な空間の復元であると同時に、複雑に絡み合った環境汚染物質を一つずつ紐解き、正常な状態へと還元していくという、非常に高度で専門的なエンジニアリングの側面を持っているのです。
特殊な廃棄物を含むゴミ屋敷のゴミ処理における技術的課題