お前さんには、この景色がただのゴミの山に見えるんだろうな。だが、俺にとっては違う。これは俺の人生の断片だ。誰も相手にしてくれなくなった俺を、こいつらは見捨てなかった。だから、俺もこいつらを見捨てられなかったんだ。あぁ、寝床のことか?あそこだ。あの雑誌の山のてっぺん、天井のすぐ下にあるあそこが俺の場所だ。狭いと思うか?いや、あれが最高なんだよ。周りをぐるりと俺の持ち物に囲まれて、丸くなって眠る。まるで母親の胎内に戻ったような気分になれるんだ。外は冷たいし、誰も俺のことなんて気にかけてくれない。だが、あの場所だけは俺を否定しない。俺の体温を溜め込んで、優しく包み込んでくれる。確かに、夏は暑いし、変な虫が出ることもある。だが、それがどうした。そんなことよりも、この箱舟から放り出される方がよっぽど恐ろしい。役所の連中や、遠くに住んでいる親戚は、口を揃えて「不潔だ」「危ない」と言う。だが、彼らは分かっちゃいない。清潔な部屋で独りぼっちで、広すぎるベッドに寝ることが、どれほど人を狂わせるかを。俺は、このゴミの海に漂う寝床という名の箱舟を守り続けているんだ。これさえあれば、俺は孤独じゃない。この新聞紙一枚、空き缶一つに、俺が生きてきた証が刻まれている。もしこれらを全部奪われたら、俺という人間も消えてなくなっちまう。お前、清掃業者だろ?頼むから、俺の寝床だけは壊さないでくれ。あそこがなくなったら、俺はどこで目を閉じればいい?どこで明日を待てばいい?……あぁ、分かっている。自分でもどこかで、このままじゃいけないってことはな。足腰も弱ってきたし、いつかこのゴミに押し潰されて死ぬんだろうなってことも。だが、それでも、今夜も俺はあのてっぺんに這い上がる。誰にも邪魔されない、俺だけの、たった一つの聖域へ。そこだけが、俺が俺でいられる場所なんだ。……おい、そんな悲しそうな顔で俺を見るな。俺は不幸じゃない。ただ、この箱舟と一緒に、もう少しだけ夢を見ていたいだけなんだ。このゴミの海が枯れるまで、俺はこの寝床を守り通してみせるよ。それが、俺にできる唯一の抵抗なんだからな。